http://yutori7.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1269237384/

775 :sage:2010/03/24(水) 23:22:06.24 ID:LTnQDk2o0
自分が変わった時
もう10年以上前だ。浪人時代、予備校に毎日電車で通学していた。
自分は池袋から新宿まで山手線に乗るのだが、毎日同じ車両に座っている女の子がいた。
季節は秋だっただろうか、セーラー服姿のその娘にひどく恋をしてしまった。
それまで1日12時間勉強する毎日だったが、恋の病とはよく言ったもので、全く勉強が手に付かなくなった。
何をしていてもその娘の事が頭に浮かんだ。
1ヶ月ほとんど勉強、食事まで手に付かなくなり、さすがにまずいと思い始めた。
だが付き合うどころか告白も勿論したこともない自分には、何をする自信も無かった。
しかし何か行動をとらなくては、何も変わらず、状況が改善する筈もなかった。 776 :hage:2010/03/24(水) 23:22:52.05 ID:LTnQDk2o0
想いを伝えようと決心したが、見知らぬ女性に話しかける勇気は無かった。
色々考えたが、直接話しかけるのは不可能に思えたので、手紙を渡すことにした。
自己紹介から始まるその手紙は、1週間以上は文章を練り直し、書き直し、書き上げた。
今思い出すと気持ち悪いとしか思えない内容のその手紙は、便せん3枚に及ぶ長文となった。
よほど付き合ってくださいと伝えてOKが貰える筈もないので、文通してください、と締めくくった。
(今だったらメアドの交換だろうが、携帯があまり普及していない時だったので、文通をお願いした)
封筒には返信用として、切手を同封した。
手紙を書く事自体は何も難しくなかったが、それを渡す事が自分にはとてつもなく難しく思えた。
なにしろ中学出てからは女の子と話しすらした事がなかった。 778 :mage:2010/03/24(水) 23:24:00.57 ID:LTnQDk2o0
今日もまたいつもと同じように、同じ電車の同じ車両に乗った。
手紙を持った自分の傍には、あの娘はいつもと同じように座っていた。
いつも自分は新宿で乗り換えのため降りる。
しかし、その日は絶対その娘に手紙を渡すんだと思い、新宿を通りすごした。
数駅通り過ぎた所でその娘は席を立った。しかし自分は緊張のあまり後をつける事は出来なかった。
引き返して予備校に向かうという情けない日々が数日続いた。 779 :chage:2010/03/24(水) 23:25:19.26 ID:LTnQDk2o0
先程も書いたが、自分は1日12時間、いやもっとだ、毎日勉強勉強、だった。夢もあった。
それが彼女に出会った途端、まったく手に付かなくなってしまった。
しかしもう、そんな事はどうでもよくなっていた。
自分の人生でそれ程まで恋した人は今までいなかった。勉強よりも大切な気持ちが生まれていた。
勉強に打ち込むためじゃない、自分の気持ちを伝えるため、その娘にしっかり想いを伝えようと自分に誓った。
ある日、その娘が電車から降りた時、自分も意を決して降りる事にした。
電車を降りて歩く彼女の後ろを離れて歩きながら、目がしみるほどの汗をぬぐった。
朝の人ごみで、手紙を渡す行為はかなり人目が気になった。
しかしそんな事はもう気にしても仕方なかった。
ふと、前方に改札が見えた。改札が何かゴールラインのように思えた。
自分は急いで彼女に向かっていった。 780 :kage:2010/03/24(水) 23:26:19.38 ID:LTnQDk2o0
改札を抜けた彼女に続いて、後ろから自分も改札を抜けた。
改札から数メートル歩いたところだっただろうか。
「すみません」
自分がそう話しかけると、すこし驚いたような表情で彼女は振り返った。
しかしその彼女の表情は、とても美しく、またひどく幼くも思えた。
「これ、読んでください」
その娘は突然の事にひどく驚いたようだった。
彼女は手を差し出して受け取ってくれた。
自分は半ば逃げるように、いや、半ばではなく、かなり走って逃げた。 781 :oage:2010/03/24(水) 23:27:02.39 ID:LTnQDk2o0
翌日から自分は乗る電車をずらした。
そういえば手紙にも「今度から電車をずらすので、どうかいつもと同じ電車に乗ってください」と書いていた。
突然知らない人から手紙をもらったらバツが悪くなるに決まっているから。
セーラー服のあの娘は今日もあの電車に乗っているのだろうか?
気になったが、手紙を渡せた、その事だけで、不思議と自分には勇気が湧いてきていた。
しかし、自分は浪人生。19歳。
高3の子ならまだしも、まだ高1だったらと、ちょっと不安にもなった。それじゃロリコンだ。
電車で見かけるあの子は大人びていたが、そばに寄って、手紙を渡した時にまだ幼いなと感じたからだ。
しかし突然の知らない人からの手紙に、返事は返してはくれないだろう、そう思っていた。
でも返事なんか来なくてもよかった。もう自然と自分は再び勉強に打ち込む事ができた。
自分にだって、告白くらいはできるんだ。何かが変わった瞬間だった。
それから1週間くらい後だろうか、予備校から帰った自分は、ふと家のポストをのぞいてみた。1通の手紙が入っていた。 782 :nage:2010/03/24(水) 23:28:38.08 ID:LTnQDk2o0
その手紙の自分への宛名を見て、一瞬で全てを悟った。
鉛筆で書かれたその文字は、まだ子供の字だった。
丁寧に鉛筆で書かれたその手紙は、何度も消しゴムで直され、しかしとても暖かい手紙だった。
突然こんな手紙をもらってびっくりした事、まだ中学1年だということ、まだ文通したりは早いと思う事…
彼女の思った事を素直に書いてくれた、とてもまっすぐな手紙だった。
そして手紙の最後には、勉強頑張ってください、とあった。
嬉しかったと同時に、そう思っていなかったとはいえ、中1の子にそんな手紙を渡してしまった事をひどく悔んだ。
申し訳ないという気持ちでいっぱいになった。 783 :age:2010/03/24(水) 23:29:37.19 ID:LTnQDk2o0
>>775から長文失礼しました
自分もあれから11年。
私は30歳になり、あの子ももう23歳だ。
彼女があの時の事をどう思っているのか、たまに気になる事がある。
「ロリコンとか超きもくねwwwww」
とか思われていても、結果としてしょうがないと思っている。
でもあの子に出会えた時から、自分の中で人生を歩む勇気を感じる事ができて、本当に感謝している。
申し訳なかったと反省する気持ちよりは、ありがとう、そう心から感じている。
自分を変えてくれた、名前も知らないあの子、元気にやってるかな?
手紙に同封した切手、返事の手紙には貼ってくれなかったね。
まだとってあるのかな…
おしまい
スポンサーサイト
■おーぷん2chへのお誘い■
■最近の記事■
■他サイト人気記事■
■人気記事■
http://janba.blog58.fc2.com/blog-entry-10148.htmlある恋の物語
|